お前もか

「こら！」

畑の見回りをしていると、見知らぬ少年がキャベツに手を伸ばしていた。

「ごめんなさい」
「どうしたの？」

少年の泣きそうな顔を見て、慌てて優しい声色になる。

「ママが言ってた。赤ちゃんってキャベツから産まれてくるんでしょ？ボク、誕生日プレゼントに弟をねだったんだ。そしたらママ困って……じゃあ自分でなんとかしようって」
「ハハッ……坊や、赤ちゃんはキャベツからは産まれないよ。赤ちゃんは、パパとママが」

「ケンター！」

駆け寄る一人の女性。

「ママ！」
「もう！勝手にいなくなって……あのねケンタ、誕生日には間に合わないけどプレゼントできるかも。妊娠3ヶ月だって」
「え、ニンジン？キャベツじゃなくて？」
「違うの、弟か妹ができるの！」

驚きつつ笑顔を浮かべる少年を見て、なんだかこちらまで幸せな気分になった。

それにしても……親御さん、どこの橋の下から拾ってくるのかな。