七色ノクターン

4
1

静かな夜だ。こんな日はピアノを弾きながら月でも見上げたいものだ。
さっとピアノを弾いてみる。ショパンのノクターン第二番だ。ピアノを弾いていると思い出す。まだ若かったあの頃の夏を。
「夏のコンクール本番まで残り僅かよ。今日も練習しなさい」
「練習……辛い……」
僕は練習が嫌になった。ピアノが嫌いになった。
「ねえ。こっそり抜け出して遊ばない?夜の草原を走るの」
そう言った幼馴染の彼女は、僕を誘う。彼女は天才ピアニストだった。聞く者に感動を与えたかと思えば、明るく元気になれる表現も得意とした。どうしてそんなに感性が凄いんだろう。
「君はどうしてそんなにピアノが上手いの?何かコツはあるの?」
「音を楽しむ事。だってそれが音楽じゃない」
幼いながらも核心をついたその答え。
あの頃、君と出会えていなければ今の僕はなかっただろう。七色に光る思い出を夜、思い出しながら、目を閉じてピアノを弾く。
公開:22/08/12 09:43

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

https://youtu.be/frouU2nCPYI

・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

〇サウンドノベルゲーム版作品(無料プレイ可)

ブラウン・シュガー
https://novelchan.novelsphere.jp/38739/

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容