メイドカフェ

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お盆の時期だけ開くというメイドカフェを訪れた。
店内は薄暗く、涼しい霊気を感じ、BGMに読経が流れ、線香の匂いがする。
喪服を着たメイド姿の婆やが「おかえりなさいませ、ご先祖様」と迎えてくれた。
婆やは、席に案内し、ランチメニューを手渡した。
メニューには、三途の川の冷製スープ、灼熱カレー、磔サラダ、血の池ジュース、針のモンブラン……とあった。
婆やが「単品でもご注文できますので、お決まりでしたら、こちらを鳴らしてお呼びくださいませ、ご先祖様」と言った。
婆やは、布団に載ったりんとりん棒を置くと、店の奥へ去って行った。
注文が決まり「チーン」と鳴らすと、婆やがやって来て、「ご注文の品が揃いましたら、こちらの数珠で合掌のうえ、お召し上がりくださいませ、ご先祖様」と言った。
食後、注文伝票を持って婆やが現れ、「お会計はあちらです。冥土の土産に、こちらの六文銭をどうぞ、ご先祖様」と手渡された。
その他
公開:22/08/13 07:05
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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