320. 「お母さん!」

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息子のたつやは初めての哺乳瓶を慣れた手付きで受け取った。
第一子だったので私は子育てに不安を抱いていたが、たつやは生まれる前からまるで人生が二週目だと感じさせるような振る舞いをしていた。
胎内では喉が乾く度に羊水をペロペロと飲み、満足すると今度は手足を伸ばしてポコポコと自由に暴れまわった。
いくつか買い揃えていた哺乳瓶とそれにつけるちくびの大きさ固さにこだわりは特にないようで、ミルクをどれで与えても喜んでぐびぐびと飲み干した。
ずりばいも歩き始めるのも早かったたつやは話し始めるのも早く、第一声は「お母さん!」だった。
私と夫は「ママとパパだよ」と話しかけていたので喫驚した。
「たつや、お母さんって言葉をいったいどこで覚えたの?」まだ会話は出来ないたつやに思わずそう話しかけた。

「ママって言葉はスナックのママのためにとっておきたいんだ」
たつやはしっかりとした口調でそう答えた。
ファンタジー
公開:22/08/12 23:57
更新:22/08/13 18:05
出産祭り 赤ちゃん祭り とある男性をモデルにしました ぱせりんさんおめでとう♡

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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