破られないものが破られた。

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 絶対に破られるはずはない。なのに……
「破られただって?」
「ああ。信じられないくらいにな」
 かなり頑丈に作ったはず。テストもした。だが、破られた。

「どうなってるんだ?」
「分からない」
 見えない敵は徐々にこちらへ近づいている。
「どうやって破ったんだ?」
「そんなの、わかるか!」

 敵の距離はもうわずかだ。
「ああ、おしまいだ」
「負けたな」
「ただいま!」
 そう言ったのは、俺の妹だ。何が破られたって? 作った壁に決まっている。

 破られないと思っていたのは、自分がそう思っていただけだった。
「おなか空いてない?」
「空いてるけど」
 俺たちは顔を見合わせる。
「お前の妹、パねえよ」
 苦笑いするしかなかった。
ミステリー・推理
公開:22/08/10 17:09
壁 家族 敵

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