サマーカンパニー

夏売ります――。ひと夏の恋を楽しんで下さい。サマーカンパニー。
そんな広告がポストに入っていた。夏の恋か。恋なんて随分としていない。よく分からない会社だが、ひと夏の恋というフレーズに興味を惹かれ、気が付いたら電話でひと夏の恋を注文していた。

そんな事をすっかり忘れた休日。日課のジョギングを終えて公園で休憩していた。

「暑いですね」
麦わら帽子を被った長い髪の女性が話しかけてきた。
「ええ。本当に」
「私、夏って好きなんです。暑いけど海に行ったり夏休みに子供達が元気に走り回っているこの季節が」
「僕もです」
それから彼女と沢山話した。とても魅力的な女性だった。僕は彼女に恋をした。二人で出かけた花畑で帽子を被った君の後姿があまりにも美しくて、僕はこっそりと写真を撮った。

来年もまた素敵な夏をお楽しみください。
サマーカンパニーより愛を込めて。

そして彼女の姿は、すっと消えていった。