打ち上げ花火

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「転校するなんて嘘だ…」
まだ付き合い始めたばかりで手すら繋いだことがないのに、彼女は親の都合で引っ越してしまう。二学期にはもういない。僕は呆然となり彼女の前から逃げるように去ってしまった。それからすぐ夏休みに入り、彼女とはそれきり会っていない。

ある日、郵便受けに手紙が入っていた。
『花火が見たい』
間違いなく彼女の字だ。今日は浜辺の花火大会の日だった。打ち上げ地点の近くから見上げる花火は迫力があり、とても人気な花火大会だった。大勢の人混みの中で彼女を探し出せるだろか?迷っている暇はない。僕は家を飛び出した。

「来てくれると思った」
彼女は山の上の公園にあるベンチに座っていた。
「覚えていたんだ」
「うん。ここから見る花火が綺麗だよって教えてくれたよね」
海に面したベンチから打ち上げ花火を横から見ることができる。僕は彼女の隣に座ると、花火を見つめたまま彼女の手をそっと握った。
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公開:22/08/10 00:14
更新:22/08/10 00:35

ひろいてん

面白そうなので参加してみました。

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