誤配郵便局

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山あいの小さな村に移住を決めた俺は用意された家に引越しすると仕事を探した。村からの資料には郵便局で求人とか。面接に行った。木造の郵便局には赤い自転車がとめてある。局長は新進気鋭の社会学者のような若い男だ。
「ようこそ。貴方の仕事は配達です。村の地図です」
村中の家と家族の名前が記されている。
「百世帯。各家の場所と家族を覚えて下さい」
「はい」
「重要なのは、誤配です」
「はい、誤配に注意します」
「そうではなく必ず誤配して下さい」
「え?」
「受取人は郵便に何を期待しているか、郵便物の不安と驚きです。他人宛の郵便物でサプライズです。村民の精神的豊かさに貢献するために誤配するのが私たちの役目です」
「受け取り拒否された場合はどうすれば?」
「配りなおします。もちろんまた誤配です」
「でも仕事などの手紙は?」
「そういう情報はメールで送られます。郵便はサービス産業であることを認識して下さい」
その他
公開:22/08/08 11:00

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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