麒麟

とある動物園で麒麟の展示が始まった。
キリンの間違いじゃないのか？と思ったがどうやら空想上の生物であるあの麒麟だそうだ。それは是非とも見てみたい。
聞けば麒麟はとても繊細な生き物で、カメラを向けられると攻撃的になるらしい。
当然、展示場は撮影禁止。麒麟はこの目で見るしかない。
しかし、麒麟を見て来た者に話を聞くとどうも反応が今一だ。
思っていたのと違う。皆が一様に口を揃えて言った。
ではどんなのだった？そう聞くと皆、微妙な表情を浮かべる。
あんな生き物を見た事がない。どう説明したらいいか分からない。捉え所がないから絵にも描けない。
そう言われるとますます興味が湧いてくる。見る程のものではないと言われても見たくなってくる。
何せ麒麟を見た誰もが口ごもるのだから。麒麟は想像絶する姿に違いない。
麒麟を生で見て思った。絵と実物ってあんなにも違うんだ…想像以上にがっかりした私は説明する気も失せた。