038.死領前にて

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「ここまでだ」
 壮年の男が、後ろの若者を制した。
「じゃあ、この先が…」
「ああ。お前でも容易く死ぬ。準備だ」
 防護衣を着込んだ二人は器材を手際よく組み立て、眼前にあるそれに焦点を合わせた。
「…静かですね」
 望遠鏡を覗きながら、若者が呟いた。
「それに、何か綺麗だ」
「あれを知らない者らしい感想だな。俺は恐ろしくてたまらん」
「なのに、この仕事を何十年も?俺と違って耐性もないんでしょ」
「だからこそさ。あれの危険も怖さも知っているからな」
「俺にはどちらもないですね。そんな奴を後任にしていいんすか?」
「俺と同じ体験でそれを知る事はもうあってはならない。危険も怖さも俺がしっかり教えてやるさ。お前にやる気があればな」
「それ、最近の若者は…てやつですか」
 苦笑いしながら仕事に戻る若者。
 その目線の先では、この世の絶望を濃縮したかのような暗き闇が一本の塔のように天へと伸びていた。
ファンタジー
公開:22/08/07 14:50
ファンタジー 兵器 仕事

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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