時代屋

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近所の神社で縁日をやっていた。境内には所狭しと屋台が出ている。
すると、その一角に見なれない屋台があった。
その屋台には「まわるまわるよ時代は回る♪」「めぐるめぐるよ時代は巡る♪」ーー中島みゆきの歌が流れている。
「こちらは時代屋だよ!
歴史で習った縄文、弥生、古墳に飛鳥、今ドラマでやっている鎌倉もあるよ。好きな時代に行けるのさ。
この幕の向こう側がその時代さ。その時代のどの出来事を観られるかは行ってみてのお楽しみ。
ただし、絶対にしてはいけないことは、その時代のものに触れたり話しかけたりしないこと! 今の時代に戻って来れなくなるから気をつけてね。
時間は三分だよ」
行ける時代のメニューを見ると、令和以降も書かれている。まったく知らない元号ばかりだ。
「お客さん、お目が高いね。未来の時代にも行けるのさ。信じるか信じないかはお客さん次第だけれどね。
実は、そういう俺も未来からやって来たのさ」
その他
公開:22/08/06 07:01
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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