角屋の煎餅

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角屋(かどや)という煎餅屋の店主は、丸い煎餅を焼かない。三角や四角、星型の煎餅、あと機嫌の良いときにハート型だけぎりぎり注文を受けている。
ある日のこと。
「こういう長いやつできますか?」
客が見せたのは、円錐形の絵だった。
「なるほど今どきは何でも3D。平べったい煎餅ばっかり焼いてても時代遅れか。でも申し訳ないけど、底が円ってのがねぇ。三角錐だったらいいけど」
「ぜひ!」
数日後、見事に焼けた。喜んだ客は、煎餅の生地に使うご飯を分けてもらって三角錐の底に付けると、それを今度は自分のおでこにビタッと押し付けた。客はみるみる姿を変え、羽の生えた馬になった。
「実は私はペガサスなのですが、せっかく日本に遊びにきたら会う人会う人、みんな『角が無い偽物だ!』って言うんです。なんか申し訳ないから角屋(つのや)さんで角を作ってもらおうかと」
嬉しそうに空に飛び立ったペガサスの額の角は、鳩が群がった。
ファンタジー
公開:22/08/05 14:55

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