パン職人

俺は一流のパン職人を目指して修行している身だ。師匠は、世界的なパン職人で尊敬できる人物だ。
「どうですか？」
俺は自分のパンを師匠に食べてもらい、感想を聞いた。黙って食べた師匠は、ついに口を開いた。
「……小説を書け」
「え？小説ですか？」
「そうだ。それがヒントだ」
師匠は、自分の力で自ら考える事が大事だ。自分で答えを見つけろというのが口癖の人だ。そんな考え方に俺も共感するし、言いたい事は非常によくわかる。しかしどうしてパン職人を目指す俺が小説を書かなければならないのか。小説なんて書いたことがないし、何より俺は多くの人達に美味しいパンを食べてもらいたいんだ。小説は食べ物でもないじゃないか。だが師匠はそれ以外、何も言わないので、俺は小説を書いた。物語を書くのは難しかった。構成をよく練って考えなければならない。
「そうか。そういうことか」
パンをよく煉る。俺のパンは練る事が足りなかったんだ。