オーダインタワーの話をしよう

　先の話でも軽く触れたと思うが。
　西大陸の中心には、世界で最も高い山がある。
　その名は、オーダインタワー。
　まさに尖塔の如く天を目指して伸びる霊峰だ。
　その正確な標高は、不明。
　頂上は大気に溶けて見えない程に遥か上空にある。
　名前の由来は、死を司る神から来てるらしいが、誰が名付けたのかは諸説あり過ぎている。しかし、その名を冠するに値する程、その山は西大陸の住ビトの命に深く関わっている。
　その最たるが、恵みの星と呼ばれる現象だ。
　季節一巡りの内に幾度か、剥がれ落ちた山の一部が地上に落下してくる。予兆を察知しにくいため、大概は大惨事につながる恐怖の現象であるが、採掘不可領域にある大質量の高純度鉱物を入手できる千載一遇の機会でもある。
　世界学者の見識では、これは山が起こしている新陳代謝の一種であり、オーダインタワーが今なお、天へとその身を伸ばしている事実を示すとされている。