グルメの末路

2
1

もうすぐ定年を迎えるというタイミングで、妻に突然離婚届けを突き付けられた。俺はオロオロするばかり。
俺が食にこだわりが強すぎるのが不満なのだという。
自慢じゃないが俺はグルメだ。妻が作る料理にいちいち文句をつけていた。
新鮮な素材はもちろん、味付けにもこだわる。特に牛肉はA5ランクじゃないと受け付けなかった。
「私があなたの食事を作るのにどれだけ苦労したか。自分で作りもしないくせに。安い給料から食費を捻出するのも大変だったのよ。子どもたちも独立したし、もう終わりにしたいの」
「しかし、別にギャンブルをやるわけじゃないし…それぐらい…」
「お金だけの問題じゃない。その見栄っ張りな性格がイヤなの」
そう言いながらバッグに荷物を詰め込んでいる。
「最後に教えてあげるわ。あなたが一番おいしい肉だって喜んで食べていたのはね、大豆ミートだから」
俺は妻が出ていくのを茫然と見送った。
その他
公開:22/08/06 17:18
更新:22/08/12 08:27

ナユセナユ

どんでん返しが好き。ちょっとずつ書いていきたいです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容