愛の鐘

愛する二人は結婚式を終え、ホテルの式場の最上階スイートでくつろいでいたが、今は少々揉めていた。この上にカップルが鳴らすと幸せを呼ぶという愛の鐘があって、女は行きたがったが、男は「あの音聞くと頭が痛くなるから」と嫌がっていたのだ。
女は仕方なく事情を話し出した。
「実はあたし悪魔にプロポーズされたことがあるの」
男は唖然とする。
「本当の話よ。人間じゃない人とは付き合えませんって、ちゃんと断ったけど。それから何度か現れるうちいなくなっちゃった。人の気持ちがわかる悪魔だったのね」
女は思い出して身震いした後、吹っ切れたように笑顔を作った。
「ウェディングベルって悪魔を追い払える魔力があるんだって。だからどうしても二人で鳴らしたいわけ」
男はため息をついた。
俺は君と結婚したくて、男にうまく乗り移ってなりすましに成功したんだけど…。
どうしても行かなきゃいけないかなあ。