クローゼットルーム

コロナ流行期。一人の時間・自分だけの空間を求め、クローゼットルームを取り付ける家庭が一気に増えた。
クローゼットルームは狭いながらも取り付けた本人だけが認識＆出入りの許された不思議な空間。現実世界と隔絶されたこの場所で過ごす人は少なくなかった。
とはいえ、コロナが過ぎ去ってしまえばクローゼットルームの需要も一気に減った。取り付けた本人しか認識・出入りの出来ないその空間は管理が面倒であった。
いつしかクローゼットルームを取り付ける家庭もなくなり、それは過去のものへと変わった…それが今、社会問題になっている。
古い家を取り壊す際、クローゼットルームが次々と現れる。
そこに隠していた大金が発見されると元住んでいた者へと連絡しないといけない。
家の取り壊しは行政の立ち合いが必須となった。
何よりクローゼットルームから時々、身元不明の死体も出てくるものだから工事関係者はいつも緊張を強いられている。