花火師の憂鬱

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夜空に咲く満開の打ち上げ花火。それを見ては喜ぶ若者達。
綺麗な花火だ。私が現役で作っていた頃より技術も技能も格段に上がっている。それは喜ばしい事だ。
しかし、あれを作っている花火師のどれ程が、花言葉の意味を知っているのだろう?
花火は花と付くだけあって、植物の花をモチーフにしているものが多い。昔は花火に花言葉を添えて思いを伝えていたものだ。
例えば赤いバラの花。それを何発も空に打ち上げては、本数によって意味合いを変えるバラの花束を模した。
例えば赤い菊の花。「貴方を愛しています」とシンプルに伝えるそれは私が若かりし頃、妻に告白した時に使用したものだ。
だが今、空に打ち上がるは黄色い菊の花。「破れた恋」を意味するそれを見て憂鬱になる。
さらにアネモネのような小ぶりな花火がいくつも打ち上がる。
儚い恋、恋の苦しみ、破れた恋…見ていて辛くなるのは、きっと花言葉を知る私だけだろう。
公開:22/08/02 20:56

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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