Ⅲ.八章 根源悪ノ牧場 9/9

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 静かに本を開くスパイス。
「いつからか人間は、自らを柵で覆うようになった」
「命への執着と保証は、生に対する希求を薄弱化した」
「その果てに求められたのが、牧場主であった」
「執着と保証の補填。その代償は隷属だった」
「無知と浅慮による追従が、牧場を広げた」
「やがて、その牧場には正義を冠した悪逆が蠢き、人は信じることと疑うことをやめ、望まれるように生きて死ぬようになった」
「人間は、自ら家畜となったのだ」
 最後をハックが締めくくった。
「あなたは、自分の眼でこの世界を見てきた。それだけで、この終わった世界で何が起きているのかを見抜いてしまった。あなたの心はとても繊細で、それでいて冷酷で、とても弱く優しいのですね」
「矛盾してないか?」
「ええ。ですが、その矛盾も含めた心を持ったあなただからこそ。わたしたちは迎えに来たのです。…お返事を、いただけますか?」
「…俺は、…俺は…」
SF
公開:22/08/04 23:01
連載 SF 戦争 差別

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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