花火師の憂鬱

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俺達一族の遺伝子には”引きこもり”と”職人肌”が深く刻み込まれている。
それ故に一度仕事を始めると寝食を忘れる程に没頭し、工房から出てこない。
それ故に死んでしまう者もいるがそれは仕方のない事だ。周りは残酷だと言うがこれは自然の摂理だ。
今日も俺は工房に籠り花火を作る。花火師として最高の八尺玉を作り上げている。
「一度ご自身の作品を見に出て来たらどうですか?」なんて言われる。ごめんだね。俺は死にたくない。
俺の父は俺の作品を見る為に地上に出た。俺の作品を見て、そのあまりの美しさに父はショック死した。
バカな話だと思うかい?俺達はモグラだ。太陽の光を見たら死ぬと言われている生き物だ。だから父の死は仕方のない事だ。
俺は今日も花火を作る。花火の大きな音はミミズを怖がらせ、地中深くに住む俺達の下に追いやってくれる。
だから当然、花火を美しくする必要はない。だがそうしてしまうのは職人としての性だ。
公開:22/08/04 21:00

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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