花火師の憂鬱

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昔の話だ。ケチと後指差される花火師の男がいた。
当時の花火はとにかく火薬を詰め込み、空に打ち上げては派手に爆発させる事しか考えていなかった。
そんな中、男は火薬を小分けにして、それを尺玉へと詰め込んでいく。
他の花火師は鼻で笑う。男の尺玉を蔑む。いつしか男に僅かばかりの火薬しか寄越さなくなった。
だが男は気にしない。火薬が少ないならそれで楽しめる工夫をした。
これがまさかの大当たり。男は花火を誰もがいつでも楽しめるものへと変えた。まるでご先祖を弔う線香のような花火に皆の心は奪われた。
男はケチではなかった。とても繊細だった。
それに気付けたのはこの話から百年余り後。
何故そんなに時間がかかったかと言うと古い打ち上げ花火が廃れるまでそれ程の時間がかかったというだけだ。
男の繊細な打ち上げ花火が認められるまでそれ程の時間がかかったというだけだ。
男の花火にケチをつけていた連中はさぞ憂鬱だろう。
公開:22/08/04 20:56

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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