帽子の価値

俺は人気のホスト。興味は金とビッグになること。
ふと客は毎度帽子が違うババアで、「あなたは特別よ。イタリアに連れて行ってあげるわ」って言うくらい俺を気に入っていた。自分の帽子をくれたりして。ババアと旅行はご免だけど、羽振りがいいから愛想笑いしてた。
で、もらったものは片っ端から金にする。意外と高額で売れたよ。
だが、売っ払ったことがすぐババアにバレて大激怒。１点物でモノを見ればわかるとかで。それから二度と店に来なくなった。
まあ、貢ぐ女はたくさんいるから別に困りはしなかったけど。
最近、前に店を移った後輩に会った。ババアの趣味の帽子をかぶっていたからこいつの店に行ったとわかった。後輩は嬉しそうだった。
「世界的に有名な帽子のデザイナーにスカウトされて…。モデルとしてミラノコレクションのランウェイを歩かせてもらえるんです」
イタリア旅行とはそういう意味かと初めてそこで知ったんだ。