花火師の憂鬱

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庭に植えた火種から芽が出た。それを見て君は笑う。「今回はどんな花火が咲くだろうね」と。
花火に水やりは厳禁だ。強めの日光と乾燥した風の当たる場所で育てる。そうするとロウソクの火のような蕾をつける。
細長い蕾を見てホッとする。丸い蕾だとタンポポのように綿火が空へと舞い上がり、打ち上げ花火みたくなる。それはそれで綺麗だが火事の危険性もあるからね。
花火は一日花。咲くのは一瞬だ。火花をパチパチと飛ばしながら咲くその姿はとても美しい。花火以外の植物ではこうはならない。
散った花火をそっと回収する。これを加工すれば店で売っている花火の完成である。
私の作る花火は天然物で、値段も少し高めだ。だがその分、美しさは保証しよう。
君は「天然物の花火がもっと沢山作れたらいいのにね」と無邪気に笑う。
僕は苦笑いを浮かべる。最初にも言ったが花火の種は火種だ。
争いを原料にした花火を見て、密かに僕は心を痛めている。
公開:22/08/01 20:54

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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