回転寿司屋に行こう

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「ちかちゃんは何にする?」
娘に何を食べるか聞くと、鮪が良いと言われた。鮪と鯵と鯛を頼むと、少し時間が経った後、それらがレーンで運ばれてきた。
「最近の回転寿司は速いわねぇ」
寿司職人はお父さんで、お客さんは私たちだけなので、いつもより速いのは当たり前なのだが。リビングのテーブルに置いた「家庭用回転レーン」は、コロナ禍でも家で楽しく食事ができる便利アイテムだ。
「ちかちゃんもお寿司屋さんやる!」
そう言うと娘はキッチンに立ち、おもちゃの包丁で鮪を切ろうとしたが、なかなかうまくいかないようだ。
お父さんが代わりに「本格回転お寿司屋さんセット」の鮪を娘に渡す。それは、おもちゃなので食べられないものだ。
「めしあがれ」
あれ、隣のお父さんが食べている?
「ちょっと何して」
「これ美味しいね」
咀嚼音は普通の食事をしている時と変わらない。ふいに、先ほどの鯵と鯛を見ると、それはおもちゃになっていた。
ホラー
公開:22/08/01 18:20
更新:22/08/01 23:10

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