花火師の憂鬱

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私には花火師としての才能があった。それは有り余る程で周囲も私に一目置かずにはいられない。
天才と呼ばれ驕っていた事は認める。若さゆえの過ちで私は禁忌とされていた花火を完成させてしまった。
私はそれを侮っていた。作るのが難しい花火としか思っていなかった。
それは夜空へと打ち上がると16もの火球を生み出し、1時間経った今も消えない。
ほおずきのように紅い玉が闇を照らしては地上に影を落とす。
夜の闇に目が慣れた頃、私はようやくその花火の全体を掴む事に成功した。
それは巨大な蛇だった。8つ頭を持ち、16対の瞳を持つ恐ろしい魔物だった。
私はその名を知っている。八岐大蛇。
私は愚かにもそれを復活させてしまった。そんな私に八岐大蛇はちろちろと赤い舌を向ける。
まさに蛇に睨まれた蛙。震える私を見た八岐大蛇はふっと闇にその姿を消した。
あの時から私は花火が怖い。私なんて所詮、井の中の蛙だと思い知らされた。
公開:22/07/29 20:41

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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