花火師の憂鬱

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彼と一緒にやるはずだった花火。私はそれに一人で火を点ける。
彼は私じゃない女性を選んだ。私は彼に告白する事なくフラれてしまった。
作業のように次々と花火に火を点ける。花火の火が私へと燃え移る。不思議と熱くはなかった。
むしろその火は暖かい。私の冷え切った心を温めてくれるかのように体の芯へと熱を届けてくれる。
そして、私の辛く苦しい恋心までも燃やし尽くしてくれる。
花火が終わると私は失恋の辛さを忘れていた。何であんな男が好きだったんだろうと首を傾げる。
花火を片付けると私は新たな恋に向かって歩き出した。

その話を聞き、花火師の私はいたたまれなくなった。
彼は彼女の事が好きだったと話す。しかしもう彼女の心に彼への恋心は残っていない。全て燃え尽き、灰になってしまった。その灰から不死鳥が蘇る事もない。
人の心を癒す為に作った花火が、他の誰かを傷つけた。
それを知り、私は罪の意識に苛まれている。
青春
公開:22/07/31 20:51

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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