バスタイム

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1日の終わりに私は湯船にしっかりと浸かる。
ぬるめのお湯が私を眠りに誘う。湯船のへりに頭を乗せ、そのままうつらうつらと1時間ほど夢の世界へ。
目を覚ますと湯船から上がる。そして湯船に浮かぶ、私からにじみ出た”疲れ”を回収する。
そんなものどうするのかって?金属を冷やすのに使うのさ。
私は金物屋をしている。包丁を研いだり、鍋に空いた穴を修復したりする仕事だ。
今も昔も、金属は疲れ知らずと思われがちだ。金属も「自分は疲れない」と思っているからタチが悪い。だから包丁は心と同様にぽっきり折れるし、鍋は胃と一緒に穴が空いてしまうんだ。
私はそんな金物達を修理する際、私からにじみ出た”疲れ”の入った水に浸け、疲れが何たるかを教えている。
疲れに浸かった金属は金属疲労を知り、自身の休み時を知る。金属だって休息は必要さ。
バスタイムってのは誰にでも必要なものだよ。浸かる事で誰もが疲れを認識できるのだから。
公開:22/07/31 20:44

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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