四季族

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日本各地で澎湃と湧き起こった四季族が今や一大ブームだ。
四季族は、春なら淡いピンク色の衣装をまとい桜の花びらを舞い散らしながら、夏なら水色の衣装をまとい打ち水をしながら、秋なら橙色の衣装をまとい紅葉を降り散らしながら、冬なら真っ白な衣装をまとい吹雪を発生させながら踊り狂う。
四季族は、平安時代末期に空也が始め鎌倉時代に一遍上人が広めた「踊り念仏」、室町時代に始まった「盆踊り」、江戸時代末期に世直し的な風潮を反映した騒動「ええじゃないか」、一九八〇年代に東京の代々木公園で奇抜な無国籍ファッションで踊っていた若者の集団「竹の子族」の流れを汲むというが定かではない。
四季族は老若男女問わず、思い思いに乱舞する。それが日本固有の四季の美しさを表現するためのものなのか、不穏な時代の中で平安を願ってのものなのかも定かではない。
専ら四季族の姿は風流で、自然への畏敬の念を表しているように見えるばかりだ。
その他
公開:22/07/31 07:12
四季 ピンク色 水色 橙色 自然

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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