豚とプール

もうヤケクソだった。
流れるプールを開業したのに、コロナ禍で閑古鳥が鳴き続けている。このままでは倒産一直線だ。
だから仕方なく、プールで豚を泳がせることにした。養豚の肉質アップとともに、物珍しさで客が集まってくるかもしれない。
もちろん非難の声が殺到した。
「豚と泳ぐなんて、トンでもない」「そんなことしても、焼き豚に水だ」「まともなカツ用を考えろ」「豚が泳ぐなんて、あらまあ、ピッグり」
私は外野の声を無視した。温泉に入るカピパラが人気になる時代だ。豚をプールに入れて何が悪い。
豚が泳ぎ始めると、プールは一気ににぎやかになった。なぜか仲買人も訪れて、泳ぐ豚を見て値段を決めていく。
おれは気がついた。これは豚の生簀だ。魚の目利きではなく、豚の目利きが誕生したのだ。
これはいける。次は牛をプールに入れてみよう。もちろん、非難ギューギューだろうが。