マスカラ中、口開いてますから。

今日もマスカラを塗る。塗るために目を大きく見開く。ペリカンの嘴みたいにガバッと開く。目と連動して口も、縦に大きく開く。まさにペリカンそっくりな阿呆面をしているマスカラ中、私はいつも吐いている妄想をする。今は、ファンシーな虹を滝のように吐いている妄想だ。今日は吐く虹の量が多い。マスカラを上手く塗れなくてずっと目と口を開けているので大量の虹を吐いている…あ、いい感じに塗れた。私が口を閉じたと共に、吐いた虹は虚空へ消えていった。

今日も飲みに行く。
飲みまくって私以外が酔い潰れ、話す相手が眠り暇になる。独り、手鏡を取り出し、落ちてきたマスカラを塗り直す。やっぱり阿呆面をする。そして吐く妄想もする。今は墨汁をだらだら吐いている妄想だ。あぁ上手く塗れない。塗り、墨汁を吐き、塗り…突如静止した。何かヤバい。胸がむかむかし、猛烈な不快感が来る。…直後、私は床に吐いていた。墨汁ではない大量の〝現実〟を。