陰の名探偵

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パンドラ氏は並外れた洞察力という特技を持っていた。
例のごとく屋敷に招待されたパンドラ氏は、この家の三男が屋敷中の人たちに強い殺意を抱いているのが見えた。そこで三男が用意しておいたナイフなどの武器を遠くに捨て、部屋に仕掛けてあった密室の仕組みも解除しておいた。
そして世間話をして三男に近づき知己のようになった。実はこの家の人たちに対して良からぬことを考えていたが、自分にも非はあったかな馬鹿なことを考えていたかなと告白してくれた。当然ここだけの話にした。

こうして一家全員が惨殺される羽目になったかもしれない事件を、未然に防ぐことができた。パンドラ氏は事件を解決したわけではなかったから、陽の目をあびることもなく報酬も一銭もなかったが大満足だった。
真の英雄とは歴史に名を残した人ではなく、周りの人たちのために生き、名もなく消えていった人だということを彼自身がよく分かっていたからだ。
ミステリー・推理
公開:22/07/28 21:49

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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