帰り道の忘れ物

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深夜、会社からの帰り道、忘れ物屋という店に興味本位で入ってみると頑固そうな親父が僕を睨む。
店主なのだろう。不機嫌そうに鼻を鳴らし、「これ買ってとっとと帰れ!」と何かを投げ寄こしてきた。
それは『早く帰ってきて遊ぼう祈願』と書かれたお守り。仕事で忙しい僕の為に幼い息子が作ってくれた手作りのお守りだ。
そういえば随分前に失くしてそのままにしていた。失くした事を気にも留めていなかった。そんなお守りを見つめ、僕は思う。
僕は何をやっているのだろう?家族の為と言い、好きでもない仕事に追われる日々。
家の事は妻に任せっきり。愛する家族とまともに話せていない。
僕は家に帰る楽しみをすっかり忘れていた。どうすればいいのだろう…
「考えてる暇があるなら早く帰れ!」
怒鳴る親父に追い出された。僕の手にはしっかりとお守りが握られている。
明日からは早く家に帰って家族と共に過ごそう。忘れていた時間を取り戻そう。
公開:22/07/28 21:18

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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