花火師の憂鬱

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札幌35度、仙台41度、東京45度、大阪47度、福岡48度。前日までの豪雨から一転、各地で最高気温が更新された。熱波が到来したヨーロッパでは、山火事が相次いでいるという。大勢で集まってはいけないからと花火大会の中止や延期が続いた頃もあったというが、今では、暴風雨や熱波など、異常気象での花火の中止が増えていた。洋次は清流の流れる麓町まで車を走らせやってきた。通いなれた道の向こうには、今も花火を保管しておく火薬庫があったが、しっとりと艶やかだった苔は、色を失っていた。洋次は火薬庫のまわりをぐるりと歩く。倒木が重なりあった一段と暗い場所に、小さな塊が転がっている。丸みを帯びたカープは、何かの生き物?薄暗い火薬庫の裏で、鮮かな色が際立っている。鳥?少しでも涼しさを求めてと、熱帯雨林から渡ってきたのだろうか。花火玉が蕾に見えたのだろうか。体と不釣合いに大きな嘴から、黒い火薬がこぼれている。
公開:22/07/28 16:32

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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