真夏の水辺散歩

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水辺の風景は、暑さで白く霞み、オニユリの橙色だけが鮮やかに彩っています。葦たちは微動だにしません。重苦しい草熱れと蝉の声がどこまでも続いています。

小川を覗いてみると、涼しげな梅花藻の上を小魚たちが、さっと通り過ぎ、陽の光を浴びた田砂が煌めきながら、湧き水の中で舞っています。
更に目を凝らして見つめると、忽ち別世界が広がり、仲睦まじい河童の親子三匹が見えてきました。

「坊やのキュウリを齧る音は、いつも小気味いいわ」
「スイカなら、もっと良い音なのになあ」
「そうだ、この間坊やのために思い立って、岸に出て、スイカ畑に向かっていたら、狸に追いかけられてね」
「お父さん、これが本当の、『陸(おか)へ上がった河童』だね!」
「まあ、坊やったら!」
親子一同から笑い声が溢れました。

水辺では蝉の声が依然として鳴り響いています。葦たちが微かに揺れ始め、遠い空から今、正午の時報が聞こえてきました。
ファンタジー
公開:22/07/24 21:16

痩せがえる

遅筆のため、週に一作できればと思っています。どうか、よろしくお願います。

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