惹き込まれる

作家という生物は難儀なものだ。
家族愛を描いた良作を見ると自らも家族愛をテーマに作品を書きたくなる。
自分ならどうするか？自分にとって家族とは？心の奥底に問いかける。
上質のファンタジーを見る。自らもファンタジーに思いを馳せ、書きたくなる。
幼い頃に思い描いていた幻想世界。そこに持てる想像力の全てを注ぎ込む。
そう、作家という生物は周りに影響をされやすい。アウトプットが必要な生き物だからこそ、その情報に惹き込まれてしまう。

そんな中、ある作家は極上のホラーと出会ってしまった。
ホラーは人の恐怖を、深層心理を暴こうとする。心に深くメスを入れるんだ。それは即ち、己の恐怖と向き合う事でもある。その痛みに悲鳴を上げる事もあるだろう。
だがそれ以上に恐ろしいのは深層心理の暗闇はこちらが覗けば、向こうも必ず覗き返してくる。
そうして惹き込まれたが最後、その作家は恐怖を突き詰めずにはいられなくなった。