花火師の憂鬱

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父が見ているだけで涼しくなれる”納涼花火”を1年かけて作り上げた。
夏の暑い夜、これを見るだけで涼が取れるんだ。売れないわけがない。花火業界に活気が戻る。
多くの人が父を訪ねにやってくる。そして職人気質の父を前に逃げ出す。
「こっちにこい。作り方教えてやる」
父の誘いを俺は無視する。俺は俺のやり方で俺の花火を作る。
ため息を吐き、納涼花火作りに戻る父。俺はそんな父の背中をただただ見つめた。
父は1年前、事故で亡くなった。
皆が悲しみに暮れる中、父は幽霊として戻ってくるや納涼花火を作り始めた。花火師としての腕と幽霊としての腕で作られた最高傑作だ。
確かに納涼花火は凄い。だがそっちに行くという事は俺も幽霊になるという事。
俺は生きている内に親父を越えるという夢がある。見てろよ親父。いつか俺の最高傑作で天国へと連れて行ってやるからな。
その前にまず、普通の花火を活気づけるところから始めないとな…
ホラー
公開:22/07/26 20:43

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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