花火師の憂鬱

ゴジアオイ、という花をご存知だろうか？植物界のサイコパスと呼ばれ自然発火する花と噂されている。
正午頃に花を咲かせると夜が明ける前には枯れてしまう一日花。花言葉は「明日、私は死ぬだろう」。
とても好印象を持てるような花ではないが私はゴジアオイを愛している。
私は以前、ゴジアオイが自然発火する瞬間を目にした。それはとても美しかった。
空に咲く花火を見て、ゴジアオイはまるで自分もああなりたいと言わんばかりに己を燃やした。その姿に私は恋をした。
花が惚れる花火を作る。それが私が花火師になった理由であり、今なお達成できていない目標である。
人は私を評価する。しかしゴジアオイは私の花火を見て俯いてしまう。
「私が出会いたいのは、あの花火ではありません」そう言われているようにすら感じる。
一夜の出会いすらさせられない私は己の未熟さに歯噛みする。
そして私以上に憂鬱なゴジアオイを想い、我が身を恋焦がす。