或る花火師の毒吐(どくはく)

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職業が花火師だと答えると、『華やかですね』『大変ですね』と返される事が多い。
繊細な手仕事ゆえ大変なのは確かだが、製作工程も商品もむしろ極めて地味だと思う。
うちは江戸時代から続く線香花火師だ。流行りすたりに左右されず、一本の線香の様に、伝統の技を細く長く守ってきた。

しかし近年は顧客のニーズも多様化し、対応に困る注文も増えた。
火の玉が落ちるのはぼったくりだと言われ、台風でも消えないほど火力を上げた。線香は辛気臭いと言われ、英語読みの『インセンススティックスパークラー』に改名した。もっとカラフルで映える感じにと言われ、七色に炸裂するレインボー閃光花火も作ったが、結果はどれも不発に終わった。

そして今度の注文は、安全と環境に配慮し、煙も火も使わずゴミも出ないVRの花火だそうだ。
まったく昨今の客ときたら。手持ち花火を振り回すのはご法度なのに、花火師は好きに振り回せると思っているらしい。
その他
公開:22/07/25 13:34
月の音色 月の文学館 テーマ:花火師の憂鬱 朗読採用いただきました✴

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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