華やかなアレルギー✴
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「ぶえっくしょん、ちくしょうめ!」
夏休み真っ盛り、書き入れ時の仕事場で、俺はくしゃみを連発していた。
火薬症――火薬に対するアレルギーだ。長年火薬にたずさわる花火師の職業病と言ってしまえばそれまでだが、精密な手さばきと細心の注意が必要な現場にあっては命取り。この火薬症が原因で、熟練の職人が次々廃業に追い込まれていた。
「はくしょん!ふあっくしょん!」
ええくそ憎らしい。熱くなった目頭を押さえゴーグルを装着する。火薬なら鼻水で湿気って不発になれば良いものを、炎症は飛び火するばかり。酷い時は目から火花が出るので危険極まりない。
「残念ですが引退なさった方が……た~まや~!」
レントゲンを鑑賞しながら、医者が気休めの消炎剤を差し出す。俺の肺では花火大会が開催中らしい。
「四十年も花火一筋なんです。何とかなりま……ぶわ~っくしょい!!」
くしゃみの拍子に火炎が噴き、医者の頭を焼け野原にした。
夏休み真っ盛り、書き入れ時の仕事場で、俺はくしゃみを連発していた。
火薬症――火薬に対するアレルギーだ。長年火薬にたずさわる花火師の職業病と言ってしまえばそれまでだが、精密な手さばきと細心の注意が必要な現場にあっては命取り。この火薬症が原因で、熟練の職人が次々廃業に追い込まれていた。
「はくしょん!ふあっくしょん!」
ええくそ憎らしい。熱くなった目頭を押さえゴーグルを装着する。火薬なら鼻水で湿気って不発になれば良いものを、炎症は飛び火するばかり。酷い時は目から火花が出るので危険極まりない。
「残念ですが引退なさった方が……た~まや~!」
レントゲンを鑑賞しながら、医者が気休めの消炎剤を差し出す。俺の肺では花火大会が開催中らしい。
「四十年も花火一筋なんです。何とかなりま……ぶわ~っくしょい!!」
くしゃみの拍子に火炎が噴き、医者の頭を焼け野原にした。
ファンタジー
公開:22/07/25 13:32
月の音色
月の文学館
テーマ:花火師の憂鬱
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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