ぎゅーっ

私は選択を間違えた。
バレンタインハート。その名前とは裏腹に猫の心臓病と呼ばれる病気である。私の愛猫はそんな病気に罹っていた。
私は愛猫の延命治療を望んだ。少しでも長く生きられるように。１分１秒でも一緒にいられるように。
でも愛猫は違った。１分１秒でも私と一緒にいたかった。病院のケージなんかではなく、私の腕の中にいたかった。
愛猫は自分がもう長く生きられないと分かっていた。
だから私に甘えては抱っこをせがんだ。ぎゅーっと抱きしめると喉をゴロゴロと鳴らし、幸せそうに眠った。
私はあの子が最後を迎えた時、何故抱きしめてやれなかったのかと後悔する。
ケージの中で肺に水が溜まり陸の上で溺死した愛猫。
何故、私の腕の中、愛で溺れさせてやれなかったのかと後悔する。
冷たくなったあの子を抱きしめるのではなく、冷たくなるあの子を最後まで抱きしめ続けてあげたかった。
私はこの後悔を一生胸に抱いて生きていく。