ぎゅーっ

最近ペットに服を着せる人間が増えてきた。私の飼い主もその一人だ。
私に似合うと言っては沢山の服を着せてくる。私はこの行為、嫌いではない。
なぜなら私は人間になりたい猫なのだから。
人間は服を着る。だから人間になりたい私も服を着る。
そんな私に反し、飼い主は猫になりたいとよく話す。
なら、猫になってみるか？
私は猫を脱ぐ。代わりに人間を被る。きぐるみのようなものだ。体が重くなる。
飼い主には猫を被せてやった。器の小さな飼い主だ。私の大きさにぴったりとフィットした。
こうして私達の交換生活が始まった。

飼い主のドーリョーと名乗る人間が「最近の貴方、猫被り過ぎよ」と苦言を呈す。
逆だ。猫が人間を被っているのだ。滲み出る猫感はどうしようもない。
しかしまあ人間になってみて分かったんだが、ぎゅーっと締め付けられるこの感覚は確かに苦しいものがある。
猫になりたいという人間の気持ちがやっと理解できた。