明日の足音

「はじめましてＦ博士、モグ・ヘーベル賞受賞おめでとうございます」
「別に名誉じゃないが」
「何の役にも立たない発明に与えられるモグ・ヘーベル賞は世界で一人。素敵な業績です。受賞された発明をぜひネット記事に掲載させてください」
「じゃ、まずこのイヤホンを」
「はい、ぺたぺたと足音だけが聞こえます」
「ワシの三日前の足音じゃ」
「録音されたのですね」
「違う。現在のワシのふるまいを解析して足音を推定しておるんじゃ。三日前からの足音を構成することができる」
「はあ、それは何のために？」
「別に。だからモグ受賞じゃな」
「素晴らしいですね」
「未来の足音も構成できる、まだ２４時間までじゃがな」
「えっ、私の足音も聞けますか？」
「簡単じゃ、聞いてみるか」
「はい、できれば・・これが今からの私の足音ですね・・あれっ、聞こえません」
「ふむ、三時間で消えとる。帰りがけは交通事故に気をつけることじゃな」