壊れた眼鏡

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眼鏡が壊れた。右の柄の部分がバキッといった。眼鏡がないと生活できないわたしは、とりあえずセロハンテープを巻いて応急処置したのだけれど、案外、誰もそれに気がついていないようだ。
忙しさから美容室に行けず、伸ばしっぱなしの髪も幸いしたのかも知れない。ただ、支柱が定まらず、なんとも心許なくて、わたしは仕事帰りに行きつけの眼鏡屋に寄った。

「いやー、見事に折りましたね。真っ二つに」
いつものお兄さん店員はそう言って笑い、
「今日はどうしました?」
まるで病院の診察のように聞いて来る。
「踏みました。おしりで。机に置いたはずなのに何故か椅子の上に落ちてて」
新しい眼鏡を勧めるでもなく、彼は笑いながらお直ししますねと奥に引っ込んで行く。初めての給料で買った眼鏡。散々悩んで買ったことを覚えてくれているようでとても嬉しいのだけれど。

本当は新しいのが欲しいだなんて言ったら、彼はどんな顔をするのだろう。
その他
公開:22/12/18 19:59
更新:23/03/13 01:18
日常 眼鏡 ののの糸糸

ののの糸糸( Ito Nonono )

ツイッター(https://twitter.com/no3_ito)や創作系SNS、くるっぷ(https://crepu.net/user/no3_ito)に140字小説(ツイッターノベル)や54字の物語を投稿している他、上限2000字で掌編小説を書いている昭和女子。

野辺りな名義でユーザー登録していましたが、登録したツイッターアカウントで創作活動をしなくなったのと退会が出来なかったため、野辺りなは無期限活動停止とし、現在、創作活動中のツイッターアカウントで新規登録してこちらで引き継ぐことにしました。

『今日は何の日』や『書く習慣』というアプリのお題で書いた散文をまとめて400字にしています。

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