ぎゅーっ

知り合いが鍋の店を始めて大当たりした。
俺も負けじと鍋の店を始めたが売り上げは芳しくない…やっぱり二番煎じだと上手くいかないものなのか？
いいや！そんな事はない！
俺は知り合いの店よりイイ具材を使っている！味では絶対に負けない筈だ！
鼻息荒く言い放つ俺に親友が溜息を吐いた。
「お前さんの鍋は具材の良さがぎゅうぎゅうに詰まっている。それじゃダメだ」
どういう事だ？
「向こうの店は具材の良さがぎゅーっと詰まっているんだ。蓋を開け、口にすると旨味が広がる。だが、お前さんの鍋は具材の良さがぎゅうびゅうに詰め込まれ過ぎて、蓋を開けた途端にとっちらかってしまってる。口にする前に旨味が逃げ出しているんだ」
親友の指摘を受け、俺は旨味をぎゅーっと詰め込む為にイイ食材の数をわざと減らした。
すると俺は食材をケチっていると噂されるようになった。
「お前さん、商売に向いていないね…」
親友は再びため息を吐いた。