もち、暴走する。

人間なんて大嫌いだ。

オレは、もち。
お正月の三が日が終わらないうちから「飽きた」と言われる。「余ったおもちでアレンジレシピ」なんて、まるで邪魔者扱いだ。

こうなったら脅迫してやる。
それには人質が必要だ。オレたちから、人間たちが浮気するものといえば……。

「カレー」だ。人気者の奴らにしよう。

スーパーの倉庫で、ハンドスピーカーを持って叫ぶ。

「人間たちよ、もちを食え！」
「さもないと、カレーの命はないぞ」

大好きなカレーが人質なのが、ショックなのだろう。人間たちは深刻そうな顔をしている。

どうやら、どこかに連絡しているらしい。

しばらくして、小さな米粒が現れた。
「あんた、何してんねん！」

オカンだ！

「そんな子に育てた覚えはない」

情に訴えるなんて卑怯だ。
そう思ったのに、涙がこぼれる。

おとなしく出て行くことにした。

「煮るなり焼くなり、好きにしてください」