氷のオモチャ工場

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ここは北の果ての小さな村。
イヌイットの子供が白銀の大地で遊んでいると、光輝く大きな穴を見つけました。子供が穴を覗きこむと、そのまま穴の中に吸いこまれました。
子供が気づくと、目の前に氷でできた建物がありました。門の看板には「オモチャ工場」と書かれています。
すると、工場から真っ赤な服を着た、白くて長い髭を生やしたお爺さんが出てきました。
「よく来たね。もうすぐクリスマスで工場は大忙しさ。せっかくだから見学するかい」
子供がお爺さんに連れられて工場の中に入ると、氷でできたベルトコンベアに次から次へとオモチャが運ばれていきます。
突然、ベルトコンベアが止まると、途端にお爺さんの顔が曇りました。
「最近、このあたりの気温も上がってしまってね。氷が溶けるんだ。氷が溶けると工場がうまく動かなくて困ったものさ。早く冷やして動かさないと。プレゼントのオモチャを待つ世界中の子供たちに配れなくなるんだよ」
ファンタジー
公開:22/12/17 07:02
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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