おしくら

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「おーしくらまんじゅー!」
「おーされてなーくな!」
子供たちのにぎやかな声に目を細め、もうそんな時期かと思う。
年じゅう変わりばえしない様でも季節は巡り、白いコートでもくもくに着ぶくれた子供たちの吐息が、私のお腹で楽しげに弾んでいる。

「おーしくらまんじゅー!」
「おーされてなーくな!」
午後の北風に背中を押され、子供たちがきらきら笑いながら表へ飛び出していく。
いってらっしゃい。けんかしないのよ。元気でね。春までの無事を祈り、袖を振る。しんしんと駆ける足音に混じって鈴の音が聞こえたから、今夜の地上はホワイトクリスマスになるだろう。
急に軽くなったお腹を抱え、体をちぢこめる。何度繰り返しても、見送りはいつも嬉しくて少し淋しい。


「おーしくらまんじゅー」
「おーされてなーくな」
小さな声にくすぐられて、うたた寝から目を覚ます。
早くも次の子供たちが、私のお腹で準備運動を始めている。
その他
公開:22/12/12 13:36
更新:22/12/17 09:37
月の音色 月の文学館 テーマ:ぎゅーっ

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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