アナホーリーナイト

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「34番、時間だ」
消灯後、ベッドの下から声が。床下の穴から25番が顔をだす。
『私はやめとく』
「自由になりたくないの?」
25番の計画決行日。看守の目を欺き、物資を集め、穴を掘り、脱出経路を確保した。警備の甘い今日しかない。
『君は無実だが、私は』
34番はある夜の出来事を思いだした。いつもは侵入した家から、すぐ立ち去るのに、その日は靴下が気になった。美しいほど真ん丸の穴が空いた靴下。34番はその穴に自分を見て、自首した。 
「勝手にしろ」
34番は餞別にホイッスルを渡した。
『困った時は吹いてくれ』

やがて、刑務所内に警報が鳴る。サーチライトの光に銃声。そして、ホイッスルの音。
『やれやれ』
34番は指を鳴らし、赤い服になり、髭をはやした。壁を壊し、迎えの橇に乗り込むと空を飛んだ。
『脱獄をプレゼントするのは初めてだな』
25番を乗せ、夜空に空いた月穴を越え、聖夜に鈴の音が鳴った。
ミステリー・推理
公開:22/11/27 12:48
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