風呂を焚く男

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軍拡増税で自衛隊に入ればこの世は天国。365日無料で食えてクリスマスにはローストビーフ。仮想敵国に侵攻したはずだった。止まない災害に呑まれて仮設の風呂を焚く。小銃を抱えて凍える手を風呂上がりの婆さんが包んだ。世界には風呂が必要だ。戦争なんて外交の失敗。清潔な水と火にくべる薪が必要だ。衰退を続ける小国を好き好んで攻め込んでくる輩はいない。敵国に狙われていないと格好がつかないと仮想する。武器商人の言い値で爆買いする理由がないから仮想する。日英伊で戦闘機を作ると決めてしまったから仮想する。医師は戦火の異国で二五キロメートルの用水路を拓いた。俺はせめて薪を拾う。火にくべて風呂を焚く。そこには十分な水と最小限の燃料がある。あとはなんとでもなるような気がしないか。おまえの住んでいるところで風呂は焚けるか。風呂さえ焚ければこの世は天国。今を生きる国民が自らの責任としてその重みを背負って対応すべき風呂だ。
ファンタジー
公開:22/12/13 22:15
更新:22/12/20 06:53

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
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