新しい刑罰

２１世期後半、某国では死刑に代わる極刑が採用された。「消顔刑」と呼ばれるその刑罰はこうである。罪人が処刑室でフルフェイスの金属製マスクを被せられたと思うとすごい勢いで吸引する。髪の毛、目、鼻、口、耳などが一瞬にして吸われて消滅する。顔が消えても本人は呼吸し目で見て耳が聞こえ会話も食事もできるのは先端医療技術のなせる技である。
顔を消された受刑者はのっぺらぼうというか首から上がスキンヘッドで電球みたいである。処刑されると釈放され、それなりの金銭と住居を支給されてシャバに出る。シャバに出ても周囲のものは気味悪がって近寄らない。処刑と同時に氏名も剥奪されるので、受刑者は何者でもない者として生活しなければならない。大きなフードをかぶったりして暮らしてゆくが結局は社会になじめずに引きこもる。もはや暴力的ではなく再犯者はいない。受刑者たちは穏やかな余生を送る。非公開だが彼らの自殺率はかなり高いらしい。